地図男




仕事中の“俺”は、ある日、大判の関東地域地図帖を小脇に抱えた奇妙な漂浪者に遭遇する。地図帖にはびっしりと、男の紡ぎだした土地ごとの物語が書き込まれていた。千葉県北部を旅する天才幼児の物語。東京二十三区の区章をめぐる蠢動と闘い、奥多摩で悲しい運命に翻弄される少年少女—物語に没入した“俺” は、次第にそこに秘められた謎の真相に迫っていく。第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作。


作中作の軽妙な文体が新鮮で、一気に読みました。
膨大なメモが貼られた地図帳を持ち歩く謎の男、そこで紡がれる無数のストーリーと登場人物。出だしで提示された設定はとても魅力的で、続きを読みたくなる衝動に駆られました。それぞれの物語の人物やストーリーもキャッチーでよかったです。

ただ、それぞれの要素は光っているがゆえに、全体をまとめる部分が弱かった気がします。料理で言うと、癖の強い具材ばかりの鍋ような。単品できちんと料理した方が美味しいんじゃないかという感じがしました。

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