地図男

地図男

January 16, 2009



仕事中の“俺”は、ある日、大判の関東地域地図帖を小脇に抱えた奇妙な漂浪者に遭遇する。地図帖にはびっしりと、男の紡ぎだした土地ごとの物語が書き込まれていた。千葉県北部を旅する天才幼児の物語。東京二十三区の区章をめぐる蠢動と闘い、奥多摩で悲しい運命に翻弄される少年少女—物語に没入した“俺” は、次第にそこに秘められた謎の真相に迫っていく。第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作。


作中作の軽妙な文体が新鮮で、一気に読みました。
膨大なメモが貼られた地図帳を持ち歩く謎の男、そこで紡がれる無数のストーリーと登場人物。出だしで提示された設定はとても魅力的で、続きを読みたくなる衝動に駆られました。それぞれの物語の人物やストーリーもキャッチーでよかったです。

ただ、それぞれの要素は光っているがゆえに、全体をまとめる部分が弱かった気がします。料理で言うと、癖の強い具材ばかりの鍋ような。単品できちんと料理した方が美味しいんじゃないかという感じがしました。
「いき」の構造

「いき」の構造

January 13, 2009


日本民族に独自の美意識をあらわす語「いき(粋)」とは何か。「運命によって“諦め”を得た“媚態”が“意気地”の自由に生きるのが“いき”である」—九鬼(1888‐1941)は「いき」の現象をその構造と表現から明快に把えてみせたあと、こう結論する。再評価の気運高い表題作に加え『風流に関する一考察』『情緒の系図』を併収。


自分は「いき」という感覚を漠然としか認識していなかったので、それをさまざまな角度からするどく分析する、その切れ味が面白いです。特に立体図形として表現されたことで、そういう事だったのか、と納得させられました。そして、それでは他の感覚はどこに位置するだろうかと想像を巡らせるのが楽しいです。

また、横縞より縦縞がいきである、というくだりが実に具体的だったのが、前段の概念的な捉え方と対照的で面白いです。

書名:「いき」の構造
著者:九鬼 周造
出版:岩波文庫
不思議な少年

不思議な少年

January 8, 2009



16世紀のオーストリアの小村に、ある日忽然と美少年が現われた。名をサタンといった。村の3人の少年は、彼の巧みな語り口にのせられて不思議な世界へ入りこむ…。アメリカの楽天主義を代表する作家だといわれる作者が、人間不信とペシミズムに陥りながらも、それをのりこえようと苦闘した晩年の傑作。
年末、アルスエレクトロニカの為、オーストリアへ行くことになり、せっかくなのでそこを舞台にした物を、という事で読んでみました。残念ながらオーストリアらしい描写はほとんどありませんでしたが・・・。

人間の不幸がいろいろな形で村人に降り掛かり、それをサタン独自の視点で解決してゆきます。時には一般の倫理観から外れた事をして、主人公が避難しますが、真実を聞かされ納得します。小説というよりも寓話を通じて道徳を説くような内容でした。

どうでもいいですが、サタンの人間を見下した感覚や口調、美しい容姿などがJOJO第一部の少年時代のDIOみたいでした。


書名:不思議な少年
著者:マーク トウェイン
出版:岩波文庫